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そうだ、あの桜見よう。(奥村土牛展) [見たもの読んだもの日記]

桜の季節は、もうちょっと続いてます。

花が全部正面向きです(笑).jpg

金曜日、お仕事は昼過ぎで解散。
帰る途中で思い立ち、電車に乗りなおして恵比寿へ。

ワタシが恵比寿に行くっていったら、山種美術館なのです。
現在、奥村土牛展をやっています。

チラシなどは、春らんまんの雰囲気です。
使われている作品は、代表作のひとつである、「醍醐」。
(作品の画像は、展覧会サイトで見てくださいね~)。

ぢつは図録買ってません。.jpg

奥村土牛(おくむら・とぎゅう)は、1990年に101歳で亡くなるまで、筆を握り続けたことで知られています。
でも、院展の初入選が38歳と遅咲きだったことは知らなかったなぁ。
作品は知っているけれど、実際にまとめて見るのは、今回が初めてです。

梶田半古、小林古径を師とし、セザンヌに傾倒し、速水御舟に学んだ土牛。
古典的表現と、現代的な表現の間で模索しつつも、そのベースには、長年積み重ねられ、磨きぬかれた写生があります。
今回はあまりなかったけれど、とにかく写生がいいのだ!
花や動物を描いた作品からは、その写生の力を存分に感じられます。

「聖牛」。ちなみに土牛は、丑年生まれ。雅号も土「牛」ですね。

牛って描けない・・・orz.jpg

代表作のひとつにして、戦後日本画の名品のひとつでもある、「鳴門」。

名画だよねー.jpg

70歳の時の作品。
揺れる船の上で、奥さんに帯を持ってもらって写生し、画室では下図なしで最初から本画を描いたのだとか。

東山魁夷展のときにも書いてますが、日本画は屋外での制作はできないため、画室での制作となります。
また、写生から小下図、そして実物大の下図を描き、それを本紙に写して制作するという手順を踏み、計画的に制作するのが一般的でした。
最近は、最初から本紙に描く作家も(が、かな?)多くなっています。

小下図を作って構想を練り、あとは画面の上で一気にイメージを結実させた、ということでしょうか。
実は、色彩も構図も、写実というには、ギリギリのところまで要素を絞り込んでいます。
ですが、かえってそのことによって、渦のイメージが、見る者の中に湧きあがってきます。
写生を重ねて、「ものの本質」に迫った者こそができる表現だと思います。


それから、土牛ですごいと思うのは、その構成力。
姫路城の門を描いたという、「門」。

歪んじゃってるケロ~。.jpg

基本は垂直・水平の線でできる色面。
これで画面を区切っていきながら、実は絶妙にゆがんでたりします。
門の向こうに壁、壁に窓、その向こうにある空間、という奥行きも面白い。


今回の発見は、意外に絵具が厚塗りなんだなー、ということ。
もっと、絹に描いた作品が多いのかと思ってましたが、ほとんどは紙本彩色。
しっかり塗り重ねた絵具は、柔らかくも深みのある美しい発色をしています。
特に、胡粉の白が本当に柔らかくて美しい。出せそうで出せない白です。

それから、土牛は現代日本画の作家である、ということ。
新古典主義の古径に学んだ土牛だけど、その絵には、清新な現代感覚がみなぎっているのを感じます。

そんな画面から漂うのは、香り立つような気品と、ほのぼのとした情感。
こんな絵を描ける作家は、土牛が最後だったんじゃないかな?とさえ思ってしまう。

・・・なんてことを難しく考えなくても(笑)、「きれいな絵だなぁ」と素直に楽しめます。
大作だけでなく、味わい深い小品もたくさんで、とぼけた味わいに、思わず笑いが出ちゃったり。
まだまだ会期は始まったばかりです。日本画初心者の方もどーぞ[わーい(嬉しい顔)]

生誕120年 奥村土牛展
2010年4月3日~5月23日
山種美術館


今年も、見たい展覧会がまだまだたくさん。
きっとこの方もそうなはず。
美術好きつながりのリュカさんより、日光のおみやげ届きました。

にぎやかになります.jpg

色絵の湯呑みと合わせてみました。かわいい♪
リュカさん、ありがとうございました!


まだまだ春モードは続きますよ~。
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コメント 15

HIRO

こんにちは。
絵の世界でも基本は大事…って事ですね。
画室で、イメージを作品に昇華出来るって凄いかも
by HIRO (2010-04-12 11:17) 

mei

日本画、好きです。
美しいですね。
by mei (2010-04-12 13:58) 

リュカ

38歳と遅咲きとは、私も知らなかったです。
そうか~~~。この展覧会、「門」があるのですか~。
この絵、本物見たい!!(笑)
やっぱり行ってこようかなw
by リュカ (2010-04-12 17:36) 

北海 熊五郎

渦潮がいい感じですね。
絵は本当にいいモンですね。

by 北海 熊五郎 (2010-04-12 23:10) 

テトラ

奥村土牛、以前NHKの特集で見たんですが
齢九十を越えて全身を投げ打って制作に打ち込む姿に
かなり衝撃を受けました。
一度じっくり作品を見てみたいです。
醍醐、良いですね~!
特に幹の表現に目を奪われます。
by テトラ (2010-04-12 23:36) 

teru

渦に目が行くね~(^^
で、門すごいね~!!(><
構図、色彩共に単調になりやすくて面白みに欠ける画になりやすいシーンだと思うんだけど、なぜか見入ってしまう絵だよね~!!
ちゃんと見てみたくなります!!(^^

by teru (2010-04-13 08:34) 

oko

この人は知らなかったです・・・・
最初の満開の桜の絵が素敵ですね〜♪
by oko (2010-04-13 08:46) 

luces

画面からこぼれ落ちそうなほどの桜の花ですね。
実物はもっと美しいのでしょう。
by luces (2010-04-13 12:42) 

SAMEDI

今日の占いでね、芸術に触れると吉って書いてあったの。
ここで触れられてラッキー♪
by SAMEDI (2010-04-13 12:59) 

be-sun

山種美術館 まだ行ったことありません 奥村土牛凄いですね
by be-sun (2010-04-13 18:33) 

しろのぽ

HIROさん

はい、何するにも基本はすごーく大事ですよね。
バイクだったら何でしょう?8の字?(笑)
日本画って、画室でイメージを昇華させることが、かなり大きなウェイトを占めてる気がします。


meiさん

日本画ってほんと、美しいです。
あの絵具は、日本の美しさを描くのに最高なんじゃないかと思います。


リュカさん

その間、ずーっと写生を積み重ねていたんでしょうね。
それがあってこそ、その後名品をたくさん生み出せたのかな。
「門」いい絵ですよ。白い壁の調子がホントに美しいです。
リュカさんのレポ、楽しみです♪


北海 熊五郎さん

渦潮の絵は、戦後日本画の名品のひとつです。お目が高い(^^
ワタシはどうしても、あれこれ考えて見てしまうけど、いい絵を気楽に楽しむのがいいですよね。


テトラさん

あ、それ、ワタシは見てなくて、他の人から聞いたんだけど・・・
手なんかもう震えてるのに、筆を持つとぴたっと止まったとか?
会期が長めだから、東京にこれ見にきませんか(笑)?
「醍醐」は、装飾的な要素もかなりあります。幹の表現も、それを損ねず、幹の質感を出しているというすごさです。


teruさん

渋いところ見てますね~。
「鳴門」って、近づいてよーく見ると、筆のタッチでざっくり描いてるんですよ。
でも、すごくリアルでしょう?
「門」はものすごく緊密な構成でできているんですが、一見穏やかな風景に見えますよね。
実物を見ると、小技も効いてて上手いなぁって思います。


okoさん

東山魁夷とか平山郁夫みたいな、超有名な作家ほどの知名度はないかな・・・
でも、戦後の日本画を作った主要な作家のひとりだと思います。
満開の桜の絵の前に立っていると、うっとりするような気分でした。


lucesさん

これだけ爛漫で温かい桜の絵って、ありそうでなかなかない気がします。
会期はまだまだ残っているので、いかがでしょうか?


SAMEDIさん

えー、ココ?(笑)
そういえば、電車の中のモニターで占いやってたりするでしょ?
こないだ、「ラッキースポットは美術館」ってのがあったんだけど。
その日は、美術館は軒並みお休みの月曜日・・・意地悪してるみたいだよねー(笑)


be-sunさん

山種美術館は、去年の秋に恵比寿にお引越ししてきました。
散策ついでにどうですか?
一見穏やかな絵柄なんだけど、すごい作家だなー、とあらためて思いました。
by しろのぽ (2010-04-14 22:36) 

gwan3

山種美術館、引越しオープン直後だったと思いますが、速水御舟展に行きました。最近日本画に惹かれるんです^^
by gwan3 (2010-04-16 14:15) 

にこちゃん

日本画って、どこか曖昧な味を残しつつ
しかもどこかデフォルメされつつ、ファンタジックなニオイがします。
いいなぁーゆっくり観たいな。特に「門」、面白そう~
by にこちゃん (2010-04-16 20:47) 

miyomiyo

お達しサンクス、イチバンんんんんん?
って完全に出遅れとるガナー、、、、謀られたカモ。
これ程、おばおばおばおばばばばばばっばっばっばっ、、、、◎◎の頻繁なアップは嫁度をアップしようっつー目論見ぢゃろかい。

とぎゅー、確かに構図の取り方がセザンヌと心通じそーなトコロがありますな。
サクラの色の出し方とウシの白色の出し方はクリムトっぽくも感じます。
おそるべし、とぎゅー画伯。
◎◎も焼きハマたくさん食して貝殻を集めねばっっっっ。
それで原寸大のカサブランカを一株、スケッチしてくらさい (・_・)(._.)

◎◎はシジミの身はおろか、貝殻さえも捨てずに使うお嫁さんになるでしょう。

by miyomiyo (2010-04-17 00:44) 

しろのぽ

gwan3さん

あ、ワタシも、御舟見に行ったんですよー。
山種美術館は、茅場町から仮設に移って、そこからが長かった・・・
ちゃんと美術館ができてうれしいです。
日本画ってちゃんと見ると面白いですよ。gwan3さんには、土牛もおすすめです!


にこちゃんさん

日本画の面白さは、西洋絵画の面白さとまた違ってますよね。
ものの見方自体も違ってるし・・・
「門」は、日本画ならではの表現だと思います。
にこちゃんさんmeets日本画、いつか見てみたいです。


miyomiyoさん

ましゃかおぢさん、美術記事はスルーか!?とか思ってましたが(爆)
あれほど再訪までするのに、どこでタイミングを外したもんだかと・・・
ちゅーか最近、かなり一言二言三言多いでっせ(爆)。

で、コメするとなると、その的確さはいったい何者かと思うんですがー
他の作品には、言われなくてもセザンヌ好きですよね、みたいなのもありました。
ですが、残念ながら、胡粉に使うのはハマではなくカキ(イタボガキです)です。
どっちにしろ、何年も山積みにするほど食えません(笑)
原寸大のカサブランカのスケッチ、水彩でよければしてもいいですがどーします?

貝殻もタマゴの殻も使ってませんが、だしガラは使ってますが何か~。
by しろのぽ (2010-04-17 01:47) 

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