猫と粉塵 ～『ミリキタニの猫』

あ、もうすぐ終わっちゃうじゃん！

てなわけで、久しぶりに多摩地区を脱出し、目指すは渋谷のユーロスペース。

去年移転してたのを知らず、コンビニで情報誌を探すも、｢東京ウォーカー｣しかない・・・地図載ってないし・・・｢ぴあ｣はないのかあぁっ！と渋谷をさまよい歩くしろのぽ(笑）

で、何観たのよ？ですよね。

 

｢ミリキタニの猫｣

なんだかんだいって、絵がすごくいいので、というのが観に行った動機ではあります。

 

ニューヨーク、ソーホー地区の路上に住む、80歳(！)の日系人画家、ジミー･ツトム・ミリキタニを描くドキュメンタリー。

あの9.11にも、彼は粉塵の中、路上で絵を描いていた。お金のかわりに撮影することで絵をもらっていたリンダ･ハッテンドーフ監督は、｢うちへいらっしゃい」と、彼を自宅に迎え入れる・・・

 

リンダの自ら回すカメラに写しとられるのは、同情とか施しとかじゃない。ともに生きる隣人、友人としての、あくまでも対等なまなざし。

ジミーを受け容れていくコミュニティの包容力もすばらしい。｢クソッタレ｣なアメリカ、だけどその懐は深い。そうでなきゃ、このプライドのめっちゃ高いじいさんが、心を解かしていくことはなかっただろう。

第二次大戦中に、アメリカが日系人に対して行った仕打ちに対する怒りをずっと抱き続けていたジミー。そんな彼の、ラストのつぶやきが、ひとすじの光のように、心に届いた。

心に傷を負い、怒りと悲しみを抱き続ける者が、それでもいつかたどり着きたいと願うところに、彼は立っているのだ。長い長い旅路の末だけど。

｢感動」を演出しようとするなら、いくつでもエピソードはある。けどしない。変わらないまなざし。

だけど、心が動いた、という感覚が残る。かなりいい映画でした。

たびたび出てくる猫の面構えがまた、実にいいです。猫にまつわる悲しい記憶も、ジミーにはあるのだけど。 

 

帰ってパンフをよーく見ると、｢日本画一位画家　川合玉堂　山水　木村武山　俳画　師事東京十二年｣と作品に書かれてる・・・結構なビッグネームですよ。どこで習ったの！？確かにすごい運筆だったなー。

ジミーがずっと心に抱いている日本の姿は、美しかった。今の日本に生きるひとりとしては、ちょっと複雑な気分にもなります。

 

ユーロスペースでの上映は11月9日まで。

コメント 6

絵の事はよくわからないけど、感動する作品に出会える事
って幸せですよね。しかし、たどり着けて良かったですね
目的地に♪
by oko (2007-10-31 06:00) 

ふぉ～なんだか、しろのぽさんの解説を読んでると見てたみたくなってきますよ☆
それだけ、いい映画を御覧になられたんだなぁと^^
河合玉堂は知ってます！
見に行ったことはありませんが(^_^;)
パンフの絵はジミーさんの作品ですか？
とても綺麗☆

ジミーさん、80歳ですか！「描くことに年齢は関係なーい！」と聞こえてきそうです^^
by (2007-10-31 11:17) 

okoさん

絵でも映画でも音楽でも､これ！と思えるものに出会う幸せってありますよね。そのための探す楽しみもまたいいものです♪

iro－actさん

レヴューを書いてそうコメントしていただけるのはうれしいです♪
ジミーの絵､すごくいいんですよ。画集とか出ないかなぁ・・・

画家には長生きな人が意外に多いですよね。
by しろのぽ (2007-10-31 20:22) 

まみこさん

nice！×2（まとめてで失礼します)ありがとうございます♪
by しろのぽ (2007-11-01 18:15) 

８０歳って、そんなにエネルギッシュでいられる年齢でしょうか？！
オモシロそうだなぁ。
やっぱり絵を描いたりする人って、生き様がすなわちその人って、
そんな人多いですよねー　やっぱ芸術家はエネルギーあってこそ？
それと、やっぱり「自分の存在価値と理由」を自ら開発してるのも
アーティストに多い生き方ですよね。いいなぁー
by nicolas (2007-11-01 20:26) 

にこちゃんさん

もうめちゃめちゃエネルギッシュでしたよ！
あいむぐれいとあーてぃすと！！(←英語が日本訛りで、英語字幕がついてた(笑)って。

＞「自分の存在価値と理由」を自ら開発してる
これ、すごく言い得てると思います！
by しろのぽ (2007-11-01 20:43)