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再会する初夏(国宝・燕子花図屏風) [見たもの読んだもの日記]

桜ばっかり続いてましたが・・・
実はもう、こんな季節だったんですよねー。


カキツバタ見えるかな.jpg

人によっては、すでに連休入りしてる金曜日。
出勤だったけど、地方メンバーの移動日なので、早くお開きになりました。

ならば寄り道はここだ!

って、池?庭園???

船覚えてる人いるかな?.jpg

覚えていらっしゃる方いますかねー?
前回行ってからほぼ半年ぶりの、根津美術館です。

穴場の入り口です.jpg

地下一階の茶室口。
庭園には、外国人の方の姿も目立ちました。

まずは、明るいうちに庭園を散策します。陽射しに輝く新緑が、とてもきれい。
庭園の池には、カキツバタが咲き始めています。

茶室入ってみたい!.jpg

根津美術館では、GWに入り、カキツバタが咲き始める頃、あの所蔵品が公開されます。

尾形光琳「燕子花図屏風」(18世紀)

左右続いてるんだよね.jpg

作品の画像は→こちらでどうぞ

根津美術館は、琳派の作品についても、良質のコレクションを持っています。
なかでも、名品中の名品が、この「燕子花図屏風」。
例年この時期に公開していたのですが、改装のため中断していました。
それが、新創記念特別展の第5部として、実に4年ぶりに復活!
GWの間だけ夜間開館があると知って、やってきたのです。

展示室に入ると、まずは「伊年」印の草花図屏風が2点。
俵屋宗達の工房で制作されたとされる作品です。
こちらは、「四季草花図屏風」(17世紀)。

浮遊する花です.jpg

ツクシやナズナ、オオバコみたいな雑草さえも、こまやかに描かれているんですよ。(ナズナっていわゆるペンペン草ですが)
それが浮遊するような空間の構成が、後世の表現につながっていきます。

展示室の奥に進むと、あの「燕子花図屏風」が。
作品保護のために薄暗い展示室の中、屏風が柔らかい照明に浮かびあがっていました。
金地の輝きは、穏やかなのに荘厳な美しさ。

まず見て取れるのは、琳派の特徴でもある、同じモチーフの反復と、考え抜かれた意匠。
カキツバタの部分は、群青(青)・緑青(緑)とも、基本的には濃淡2色ずつ。それと金地。
また、カキツバタの描写も、色面で処理されており、表現そのものはびっくりするほどシンプルです。

いい絵具使ってますなー.jpg

しかし、近寄ってよく見ると、カキツバタは、実にさまざまなかたちに描かれています。
ちなみに、福田平八郎は、ハナショウブを描くにあたって、「光琳が全ての構図を描いちゃってる」みたいな事を言ったのだとか。
そして、絵具の塗りも、ただ平面的ではなく、花びらや葉の厚み、ふくらみをしっかり表現しています。

かなり前、建て替え前の根津美術館で「燕子花図屏風」の公開を見たことがありました。
あの時は、館内も狭いうえに混んでいて、人の切れ間から覗き見た、という記憶があります。
ところが・・・


夕方6時をすぎるころから、広い展示室は人もまばら。作品全体が見渡せます。
何度か見た作品だけど、こんな状況は初めてです。
信じられない。夢みたいだぁ・・・[ぴかぴか(新しい)]


展示室内のベンチに座って、ただただ作品を眺めてみます。

ふっと、違う光が射したような瞬間があって、違う景色が見えてくる。

カキツバタは、しっとりと水分を含んで、みずみずしく生い茂る。
金地は、やわらかい光を放つ空間となって広がる。
こんなに、生命感ある「絵」だったなんて。

ひとつの作品に向き合って、自分の中の違う眼が開く、という幸運。
そうさせる、作品の力。
「美術」って、そんな体験のことなのかもしれない。


・・・なんてつべこべ言うまでもなく、これは素晴しい。絶品です。

これ以外にも琳派の各世代の作品があって、点数は少ないながらも、かなりいい作品が揃ってます。
他の展示は、去年と同じものもあり、この展示に合わせたものもあり。
どちらにしても、やはりいいもの持ってますね、という充実した内容です。


美術館には年に何回も行くけれど、こんな至福の時間は久々でした。
あぁ、ずっと美術見ててよかった。




庭園のカキツバタも満喫するなら、連休中がおすすめ!
ゆっくり見られる(かもしれない)夜間開館は、5月5日までですよー。

新創記念特別展 第5部
国宝燕子花図屏風 琳派コレクション一挙公開
2010年4月24日(土)~5月23日(日)
根津美術館


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コメント 18

key-k

こんにちは。
新緑の季節、お山に走りに行くとなんか元気をもらえる気がしますw
都心の癒しスポットですね。
by key-k (2010-05-02 13:39) 

oko

覚えてますよ〜池の様な場所・・・えっ・・
半年も前でしたか・・・・ビックリです。
どーも、アヤメ、カキツバタ、イチハツ、
などのたぐい・・・見分けられません・・・
菖蒲とアイリスは解ります。多分・・・・
by oko (2010-05-02 21:26) 

北海 熊五郎

アヤメに似てルナーと思ったら、仲間なんですね。。。。
アヤメ好きなんですよねー
美術館で見るカキツバタ良い感じです。

by 北海 熊五郎 (2010-05-02 21:54) 

maki

素晴しい庭園ですね~
屋形船はどーかと思うけど新緑が美しい!
いつも通り、しろのぽ先生の分かり易い解説^^
で、今回じーーーっと拝見したら・・・
屏風に描かれてるから日本画だという先入観が出来上がってるけど
その菖蒲のアップなぞはアールヌーボーと言っても納得できませんか?
その上の四季草花図屏風なども構図を変えれば今でもテキスタイルなどに使えそうなモダンな雰囲気。
良いですね~^^
by maki (2010-05-03 00:01) 

テトラ

うわ~、超羨ましいです!
私、これは見た事無いんですよ~。
「紅白梅図」と並んで光琳の最高傑作の一つですよね。
これをほぼ独占状態で見れるなんて、何という贅沢でしょうか。
は~、モニター越しに見てても溜息が出ます^^;
by テトラ (2010-05-03 00:31) 

tonoji

杜若はもう咲いてるんですね~
菖蒲との区別がとんとつきませんが(^_^;)
光琳が描くと雑草いやぺんぺん草も立派に
見えてきます(笑)
by tonoji (2010-05-03 00:36) 

obasan

国立博物館で琳派の展示のときにありましたね。
杜若図
本物に触れることのすごさは、あのときに思いました
平日だったので、独占・・・・とはいきませんでしたが、ゆっくりと見ることが出来ました。ラッキーだったのね。
by obasan (2010-05-03 08:56) 

gwan3

作品はもちろんでしょうが、それにしても素晴らしいレポートですね。
作品の前から立ち去りがたい時の感覚がよみがえります^^
by gwan3 (2010-05-03 11:18) 

hoshizou

私は、今日桜のレポをアップしたという。
仙台から山に入ったら、満開の桜を見ることができまた。
しかし、本日(5/3)季節は一気に初夏になりましたね。
レポの、水面に反射する緑と、カキツバタの群青色が季節を感じさせます。
by hoshizou (2010-05-03 20:10) 

miyomiyo

ココにも出没してましたか、◎◎鳥。(違う?)

っていつの間にアップしてたんぢゃ(?_?)
昨日の夜に見た時はアップしてなかった気がしたケロ。
ここまで経ったんぢゃまた後で来れないんで暴れまくってくです。(今さら?)
またもや青山に行ったですか。
食事は、、、、ってマシャカ、アプローチのタケノコを食したんぢゃなかろーナ。
妄想竹のはさぞ美味だったでしょう。
庭園はいずれがアヤメかカキツバタって状態ですケロ~。
至福の時間を過ごした◎◎が描く@ホームのヒメシャガ、、、、ぢゃなくてヂャーマンアイリス、、、、でもなくてカキツバタが楽しみぢゃゾ。

by miyomiyo (2010-05-03 22:02) 

SAMEDI

絵画もすごいけど、庭園もまさに芸術ですね。
美術館だけど、自然も満喫できるのがすばらしい。
よし、ウチのベランダもこれを目指そう!(鷽、あ、嘘www)
by SAMEDI (2010-05-04 00:06) 

しろのぽ

key-kさん

新緑のお山はいいですよねー。
生命感が空気まであふれちゃってるみたいで、元気になります。
ここの庭園もすごくいい緑です。周囲がビルだらけなのがウソみたいですよ。


okoさん

この前行ったのが11月初めなので、だいたい半年です。
よく覚えてましたね~。
ショウブとハナショウブはわかります。
ジャーマンとダッチの両アイリスもわかります。
アヤメとカキツバタとイチハツ・・・って何だそりゃorz
あの庭園のがイチハツでもたぶんわかりません(笑)


北海 熊五郎さん

はい、okoさんのコメとそのレスのように、ある程度植物を知ってても区別は難しいですorz
アヤメみたいな花が好きなんですね。渋い!
美術館でカキツバタ満喫です。もう幸せ~。


makiさん

ワタシも正直、あのトタン張りの屋形船はどーなの?と(爆)
庭園の新緑はホントにきれいでした。1年で一番いい季節かも。
今回は、解説する作品を一点に絞ってみましたが、書ききれない~(^^;
えーと、アールヌーボーが明らかに日本美術の影響を受けてますね。
その前にジャポニズムもあったし・・・
光琳なんか特に、現代でも通用するモダンさだと思います。


テトラさん

この作品、見たいっていってましたよね~。
金地の絵画は、写真と実物の印象の違いが特に大きいです。
よかったらモニター越しじゃなくて、ぜひ本物を見に来てください。
公開は多分毎年恒例になるので、5月の東京に来てみては?
展示室のベンチには、他にも作品を見つめる人の姿がありました。
それぞれに作品と向き合っていたんでしょうね。


tonojiさん

カキツバタとハナショウブは、並んでたらワタシも区別がつきません。タブン
光琳の屏風にも、何気ない草花がたくさん描かれていました。
一昨年の琳派展では、メヒシバ(これまた雑草です)の美しい作品があったし・・・
物事をフラットに見るのって大事ですね(^^


obasanさん

一昨年の琳派展ですよね。ワタシが行った時は、展示替えのあとで、この作品はなかったんです。
代わりに風神雷神図4点が見られたのかな?
実物を見て受けるものってありますね。地方だとなかなか機会がないのですが・・・
展覧会によっては、平日の昼間でも混んでることがあります。
ゆっくり見られたらラッキー、という東京の人の多さに(泣)です。


gwan3さん

作品が素晴しかったので、レポを書いてても楽しかったです。
なかなか書ききれないことも多いんですが・・・
この作品を見て、他に行ってまた戻って、って何度かやってました。
同じ人を何度も見かけたから、たぶん同じように立ち去りがたかったんだろうと思います(^^


hoshizouさん

日本は広いし、標高差もありますからね。
関東近辺で、まだ見られるところもあるのかも。
とはいえ、気付けば平野部はすっかり初夏です。
水辺の景色も、緑の多い季節のほうが映えますね。


miyomiyoさん

ちゅーかここはワタシのホームなんですけどー(違う?)

3日の昨日の夜ならアップしてましたがナー。
おぢさんが暴れに来ないので、美術ネタだと引いちゃうのかと思ったゾ。
で、帰るに帰れなくてもやっぱり暴れてくっていう・・・
青山みたいな物価の高いとこで、食事なんかできませーんorz
ましてタケノコなど、直売所で一本200円で買うのみです。
アヤメ系は本気で描きたくなりましたが、福田平八郎と同じ悩みに陥りそうです。
ちゅーかカキツバタが見分けがつきませーんorz


SAMEDIさん

庭園も建物も所蔵品もまさに芸術。
やっぱり中身が中身だけに、ただの箱じゃつまんないですよね。
ベランダで緑もうもうを目指します?
嘘、いやウソはともかく、ハトくらいはホントに来ると・・・来ても困るか(笑)
by しろのぽ (2010-05-04 01:28) 

luces

素晴らしい庭園。都会の真ん中にこれがあるのがまた素晴らしいと思います。
ハナショウブ、カキツバタ、アヤメの見分けがつきません。
光琳のカキツバタは言うこと無しです。素晴らしい。
by luces (2010-05-04 12:52) 

maki

そうだった!
頭の中にはミュッシャのポスターが浮かんで、ジャポニズムが盛んだったんだよな~と思っていたのに、、、
堂々と書けてしまうのは歳のせいだわ ̄_ ̄;;
記憶が脳で混沌とし始めてる!
by maki (2010-05-04 15:05) 

しろのぽ

lucesさん

この庭園、よくぞ残ったものですよね。
地下鉄の駅からブランドショップの並ぶ通りを抜けて、エントランスから一気に別世界です。
ハナショウブとカキツバタの区別が、ワタシもつきませんorz
光琳のカキツバタ、今回あらためて素晴しさを思い知りました。
これを、かつて個人が買ったというのが信じられません。


makiさん

でしょー、makiさんともあろうお方が・・・と思いましたわ(^^;
ミュッシャが最初ミーシャに見えたのはナイショです(知らなかったらどーしよう)。
ワタシもたまに混沌としてて、記事直したりするのはもっとナイショです(笑)
by しろのぽ (2010-05-04 23:55) 

三四郎

水のある風景、いいですね~
心が落ちつきます。 癒し効果ですかね~
私は水を連想する物が大好きです。 池・川・滝・苔・小川・せせらぎ・・・・
by 三四郎 (2010-05-06 13:09) 

リュカ

根津美術館に行ってきたのですね!
改装後まだ行ってないのです。
やっぱり燕子花図屏風はいいですね~。
改装後は、そうですか。広くなっているのですか!
私も人の隙間から見た記憶ばかりなので
ゆったりとした空間で楽しみたいです。
by リュカ (2010-05-08 00:33) 

しろのぽ

三四郎さん

水の音って、癒し効果(あまり好きな言葉ではないですが)がすごーくあるんだそうですよ。
ただ、関東では、きれいな水景色はなかなか貴重な気がします。


リュカさん

あ、まだ行かれてないのですね~(^^;
改装後の展示室は広くて、大きな屏風絵も全体が見渡せます。
ただ、普段は夜間開館がないのが惜しいんですよね・・・
でも、お互い混雑回避は百戦錬磨(!?)
狙いの名品があったら、堪能しに行ってみてくださいねー。
by しろのぽ (2010-05-08 16:41) 

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