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再び、北へ。その2-それでも、海と生きる。(1) [大地震、それからの日々]

この海が、よみがえるように。


左の赤い屋根がマサノリさんちです.jpg

唐桑半島は、カキ養殖の盛んな地。
森は海の恋人」運動で知られる畠山重篤さんも、唐桑半島でカキやホタテの養殖を営まれています。

今回の唐桑行きで、最も多かったのが、そのカキ養殖のお手伝い。
ホタテ貝に小さなカキの付いた「種ガキ」を、より合わせたロープの間にはさみ込む作業です。
通常はパートさんを雇うそうですが、その余力のない生産者さんも多く、ボランティアがお手伝いする体制ができています。


これやってて手と肘が・・・(T▽T)イタイ.jpg

※種ガキについて追記
カキの産卵期(夏ごろ)にホタテの貝殻を海中に沈めておくと、そこにカキの幼生がくっついて育ちます。カキは一度くっつくと、そこを離れることはありません。
これを数ヶ月育てたものがこの種ガキです。


本来なら、遅くとも5月いっぱいには終了しているこの作業。
9月の近づく頃になっても、まだ続いていました。
ワタシは、藤浜という地区のマサノリさんのところと、対岸にある浦という地区の漁師さんのところで、それぞれ合計3日ずつお手伝いしました。
マサノリさんは、TVにも何度か出演した、唐桑のカキ養殖のスポークスマン的存在でもあります。


ロープにはさみ込まれた種ガキは船に積まれ、海中に吊るされます。
この作業をお手伝いする日もありました。(船酔いは辛うじてしてません。)


仕事場って感じですね.jpg


船の上では、マサノリさんから、唐桑のカキ養殖についてのお話をたくさん聞くことができました。



カキの生産量日本一は、言わずと知れた広島県。宮城県は第二位です。
なかでも唐桑産は、海の条件にとても恵まれていて、ほぼ全てが生食用として出荷されています。

夏、汗だくになりながら、成長したカキを熱いお湯に浸け、付着した海草や他の貝を死滅させる作業。
大きくなったカキの殻に穴を開けてテグスを通し、ロープに吊るしてゆったり育てる「耳吊り」。
いずれも、カキに海水の養分をより多く摂らせ、身を太らせるための工夫です。
きれいで養分に富んだ海水の中、手間をかけられて育つ唐桑のカキは、市場でも高い評価を受ける高級品。
マサノリさんは「カキを海のミルクというなら、うちのは海の練乳」と胸を張ります。


そんな唐桑のカキ養殖ですが、2010年のチリ沖地震による津波で、大きな被害を受けていました。
借金までして立て直し、出荷を目前に控えた今年、今度は東日本大震災による大津波。
カキばかりか船も作業場も、全て根こそぎ奪われてしまいました。


耳吊りされています.jpg


立派に育ったカキが、携帯電話のアンテナ(だそうです)に引っかかっている光景。(撮影の翌日取り除かれました)

作業は、漁師さんやそのご家族、お手伝いの方と、カキのことから雑談まで、色々な話をしながら行われていました。
そんな中、ふと「何もかも流されてしまった」と表情を曇らせることが、何度もありました・・・


どーもずっと曇っててねぇ・・・

海の上の白い小屋は、通称「ホワイトハウス」(笑)

マサノリさんのお宅から見下ろす、藤浜の海。
一見平穏な風景ですが、震災で海に近い家はすべて壊れ、海にも陸にもがれきが積みあがっていたといいます。
現在はほぼ片付けられ、家は基礎のみが残っているところが大半です。


マサノリさんのお宅は、海を見下ろす斜面のわりあい高いところにあり、すんでのところで被害を免れました。
そして船は、たまたま気仙沼の造船所にありました。
気仙沼で会議に出ていて、必死で高台に逃げ、津波を目の当たりにしたマサノリさんは、「もううちの船はダメだ」と絶望したそうです。
ですが、マサノリさんの船は、いったん流れ出した形跡はあるものの、もとあった場所で奇跡的に助かっていました。
「あきらめるな、またカキをやれ、ということだな」とマサノリさんは思ったそうです。

ですが、復興へ向かうには、たくさんの困難がありました。


2に続きます。


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リュカ

海の練乳!
想像するだけで口の中がヨダレでいっぱい。
こんなふうに、いち消費者はヨダレ出して、牡蠣をほおばって
おいしいーーーーーーーーーーーーって叫ぶだけだけど
こうやって記事を読むと、色んな工程を経てあんなに美味しい牡蠣が出来ているんだと気づかされます。
牡蠣を愛する人間として、知っておかねば!と改めて感じたよ。

ホタテ貝に種ガキをロープにはさみ込むってのも全然知らなかったです。
by リュカ (2011-08-30 20:50) 

北海 熊五郎

牡蠣は大好きなので 三陸産の牡蠣が楽しみです
by 北海 熊五郎 (2011-08-30 22:24) 

miyomiyo

7000コメント目に間に合ったんかな~。(っつーのが一言余計?)
にしても牡蠣の網が掛かってる携帯アンテナにカツオみたいのが引っ掛かってるよーに見えるんは自分の幻覚でしょーか。
んでホタテの貝殻に牡蠣を挟み込むって、、、、発想がスゲーです。
んでんで牡蠣に熱湯掛けて、大丈夫なんかが心配で、おちおち上京しとれんです。
ちなみに、ホワイトハウスっつーのは改名して、ホワイトベースにしてくらさい。

by miyomiyo (2011-08-30 23:36) 

key-k

あれ?船酔い克服されたんすか?
牡蠣も好きですけれど、ホタテも好き。
色々、商品の質を高める工夫があるんですね。
前を向いて頑張っている姿には頭が下がります。
by key-k (2011-08-31 01:16) 

HIRO

こんにちは。
お疲れ様です。
船酔いするのに、海の御仕事の手伝いとは…

やはり見えない所で、色々手を掛けてこその品質なんですね。
by HIRO (2011-08-31 05:53) 

肥前のFe

作業手伝って いろんな学習も出来るのだ
 携帯電話のアンテナに懸かった牡蠣の束
 津波の高さがわかります
by 肥前のFe (2011-08-31 08:05) 

obasan

恐ろしい高さの津波
命あってのものだね・・・・・とは言いますが、そこから立ち上がる気力を奮い立たせるきっかけをつかむまでのご苦労を思います。
人の力はすごい・・・・
頑張ってほしいです
by obasan (2011-08-31 08:59) 

luces

漁業のお手伝いのボランティアもあるんですね。
今回も沢山の出会いがありそうで、楽しみです。
by luces (2011-08-31 15:20) 

T2

こんな(漁業)ボランティアは、想像つきませんでした
ほかもあらゆるところでボランティアの方々が
がんばっているんでしょうね

by T2 (2011-08-31 21:46) 

しろのぽ

リュカさん

カキお好きですよねー?(笑)
カキをお湯に浸ける作業など、1日に2Lのペットボトルを5本以上空けるほど暑いとか。
品質のいいカキを作るため、産地の方はそれぞれに努力しています。
他の産地の方とお酒を飲みつつ、腹の探り合いもするそうですよ(笑)
種ガキは、海中にただよっている幼生がくっつくというから、実はもともと自然のものなのです。驚き。
ロープのよりを戻すのが結構大変で、6日間やったら手が痛くなりました(^^;


北海 熊五郎さん

そんなアナタに支援プロジェクト(笑)!次の回にリンクがあります。
三陸産が復活したら、ぜひ食べたいですね。もちろん生ガキ!


miyomiyoさん

コメントはカウントしてませんが、てゆーかソネブロにそんな機能があったか謎ですが・・・
ワタシもあれ、写真見て魚かと思ったです。
でもよく考えたら、5ヶ月もたった魚が、魚の形してぶらさがってるわけないんで。
ちゅーわけで、よく見たらあれはビニールかなんかでした。
種ガキはホタテにくっついてて、そのホタテごとロープにはさむんです。
穴かなんかあけて吊るしてるもんかと思ってますた。
カキはかなり生命力が強くて、海から上げて数日おいても死にません。
で、殻がぴっちり閉じてるので、60℃のお湯に10数秒浸けるくらいなら平気だそうです。
ちなみに、ホワイトハウスは、マサノリさんの奥さん命名です。タブン
ホワイトベースと呼ばせるのはハードル高すぎだと思いますケロ(爆)


key-kさん

いや、ずっと下向くと酔いそうなので、視線の向きに気をつけてたのはナイショです(笑)
カキとホタテがお好きとな!ならば支援プロジェクトいかがですか?と回し者みたいになってますが・・・
立ち上がった漁師さんもいますが、そのまま廃業される方も多いそうです。
唐桑のカキはよみがえるか・・・大変な努力が続いています。


HIROさん

唐桑VC行ったらこれ、というほど現場が多く、長いことやっている作業なんですよ。
一応、作業場はイカダのところを避け、陸の上のところにしてもらってました。
三陸、とくに唐桑は海の条件にものすごく恵まれています。
それに加えて、漁師さんたちの工夫が、唐桑ブランドを支えているんだな、と思いました。


肥前のFeさん

船を出すたびにお話してくださるマサノリさん。
唐桑のカキ復活にかける思いが伝わって、目をうるませるボランティアもいました。
カキの束、すごく高いところにかかっているでしょう?
この辺りでは、海沿いの家や工場は、頭から津波をかぶってしまいました。そんな高さです。


obasanさん

津波を撮ったビデオも見せていただきました。
とても信じられないような光景でした。
それでも、人には生きる力があるのですね。
次の回に、立ち直ろうとするための努力や、各地からの支援について書きました。
それに応えようとする気持ちも、漁師さんたちの力になっているように思いました。


lucesさん

この作業は、唐桑VCではずーっと継続して行われています。
今回も、たくさんの人の中で、考えることが色々とありました。
それについても書けたらいいなと思っています。


T2さん

漁業は唐桑の基幹産業なので、唐桑VCでは漁師さんのお手伝いがかなりあります。
現地では、場所や時期によって、さまざまに違ったニーズが出てきます。
あくまでも地元の事情を考慮しながら、たくさんのボランティアがまだまだがんばっていますよ。

by しろのぽ (2011-09-02 01:29) 

e-g-g

チリ沖地震津波の1年後の大津波、
リアルにものを育て作る仕事にとっては、
きつい!というのを通り越していますね。
しかし、それでも“またカキをやれ・・・”、
誤解を恐れずに言いますが、
ソフト的産業に身を置いていると、
そのリアルな強さにある種の羨望も感じます。
でも、あまりにもむごい惨禍。
by e-g-g (2011-09-05 20:00) 

しろのぽ

e-g-gさん

自然相手のこととはいえ、本当に大きな打撃だったと思います。
廃業した漁師さんも多い中、立ち上がる決心をした漁師さんたちには、生々しい生命力を感じました。
そして、「これしかない」という決意に、「生業」という言葉が浮かびました。
都会に住む私達に、こんな強さはあるだろうか・・・と。
せめて、これからまた、自然がたくさんのものを恵んでくれるようにと願わずにいられません。
by しろのぽ (2011-09-07 02:11) 

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