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再び、北へ。その3―それでも、海と生きる。(2) [大地震、それからの日々]

残ったもの。守りたかったもの。


この日3回船が出たよ.jpg


前回の続きです。
ここから読んでね→再び、北へ。その2-それでも、海と生きる。(1)

漁師さんにとって、船は一番大切な、生活の糧。
高価な上、平時でも作るのに時間がかかります。失ってしまえば、再び手に入れるのは容易なことではありません。

浦の漁師さんは、大地震のとき、これは大きな津波が来ると確信し、船に乗って沖へ沖へと向かいました。
船を津波から守るための、命がけの行為です。
(上の写真は、浦の漁師さんの船といかだです)
漁師さんの中には、逃げ切れずに波にのまれ、亡くなった方もいらっしゃいました。

また、奇跡的に助かったものの、家族や住宅を失い、失意の中避難所で暮らす漁師さんも少なくありませんでした。
もう海なんて見るのも嫌だ、復興なんて何を言っているんだ、そんな声もありました。
ゼロどころか、マイナスからの再開。

津波の被害を受けても、家も船も残ったマサノリさんは、比較的恵まれた状況にあります。
そんな自分が復興を言い出せば、批判を浴びるかもしれない。
それでもマサノリさんは、漁師仲間に、復興を目指そうと呼びかけることを選びました。


震災から3週間後、マサノリさんのところに、インターネットでカキを販売している会社の社長さんが現れ、支援を申し出ます。
今回作業した種ガキは、このプロジェクトからの支援で送られたものです。

マサノリさんは、漁師さんたちに、津波で流れ出したいかだや、漁具、船などがあちこちに散乱していて迷惑をかけている、だから回収に行こうと持ちかけ、海に連れ出したそうです。
海に出るうち、漁師さんたちの目つきが変わってきて、また養殖をやろうという気持ちが戻り始めたといいます。

フランスからは、いかだを浮かすためのフロートなどの資材が届きました。
かつてフランスのカキが病気により全滅の危機に瀕したとき、それを救ったのが宮城の種ガキでした。
その恩返しとして支援が行われたのです。

カキ養殖のライバルである広島からは、いかだの材料が送られてきたばかりでなく、いかだを作る職人さんも派遣されました。


日本中、いや世界中からの支援を受け、立ち直ろうとしている、唐桑のカキ養殖。
比較的船が残ったことなどから、宮城県のカキ産地のなかでも、先行して復興へ向かっています。
マサノリさんは、「一刻も早く以前の状態に戻ることが、皆さんへの最大の恩返しだと思ってやっている」と、作業に話し合いにと奔走されています。


この日は船に乗ってません.jpg

マサノリさんの船と「ホワイトハウス」。
実は、流れてきた住宅の部材などを利用して建てられてます。
脇にトイレがあって、便器のフタを開けるとそこは海(笑)
ちなみに、浦の漁師さんのところは、もとの作業場が流されたため「青空トイレ」でした。
地盤沈下のため、満潮時には、多くの作業場や海沿いの道が冠水します。



「来年の冬には、今やっているカキが成長しているはず。ぜひ食べにおいで」と言ってくださる漁師さんたち。
「カキがこうして育てられていることを初めて知った。今度は唐桑に、このカキを食べに来たい」
参加したボランティアは皆、こんな気持ちを口にします。
ただ行って作業するだけでなく、現地の方と交流し、心にその地への思いを刻んで帰るのです。
同じところに何日も入ったボランティアはすっかり顔なじみになり、地元に帰るためお別れになるときには、名残を惜しむひと時もありました。
むしろボランティアのほうが、受け取るものが多いのではないかとさえ思います。



この海を、ふたたび、フロートやいかだが埋め尽くす日が、来ることを信じて。


唯一きれいな夕焼けの日.jpg


遠くからでもできること。
どちらも、一口一万円で産地を支援し、出荷できるようになったら海産物が送られるというものです。
復興には、少なくとも数年の歳月がかかります。長い目で見た支援が必要です。

三陸唐桑再生プロジェクト
唐桑の漁業を応援します。牡蠣、ホタテ、ワカメなど。
http://www.sanrikutokusen.jp/

三陸牡蠣復興支援プロジェクト
三陸の牡蠣養殖を応援します。復興後の三陸牡蠣が送られます。
http://www.sanriku-oysters.com/
(唐桑の産地リポートに、マサノリさんが登場しています)


※今回および前回の記事は、漁師さんのお話などをもとに書き起こしたものです。文責は全て筆者にあります。

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コメント 15

oko

日本は再生の為にホントに一生懸命
前に進んでる・・・そんな気がします。
by oko (2011-08-31 15:25) 

リュカ

本当に多くの支援があって、
牡蠣が復興しようとしてるんだね。
私がオーナーになった牡蠣は、「三陸牡蠣復興支援プロジェクト」のほうだけど
こうやって、猟師さんの力と、いろんな人の力があるからこそ
出来たプロジェクトだね。
いつか、牡蠣が送られてきたら大事に食べたい!

by リュカ (2011-08-31 22:09) 

hoshizou

きれいに見える湾のそこには、流れ出たガレキが積もっていて、
船の航をジャマしたり、養殖の網を壊したりするそうです。
ダイバークラブのボランティアが、港の底の清掃しています。
気の遠くなる話ですが、それでも、一歩一歩復興に向けて歩んでいるのですね。

by hoshizou (2011-08-31 23:47) 

かみさま

>遠くからでもできること。
どちらも、一口一万円で産地を支援し、出荷できるようになったら海産物が送られるというものです。
復興には、少なくとも数年の歳月がかかります。長い目で見た支援が必要です。

これは是非注文しなきゃ(^_-)-☆
協力って意味もそうだけど素晴らしい海産物が出来そうだし・・・♪
by かみさま (2011-09-01 06:41) 

しろのぽ

okoさん

ここに来て、復興への動きに濃淡が出てきているように思います。
あらゆる人が、置いてけぼりにならないように・・・これからの課題もたくさんありますね。


リュカさん

「三陸~」のほうは、サイトでカキを買っていた人の、支援したいという声から始まったのだそうです。
漁師さんたちの、復活への思い。各地からの、支えたいという気持ち。
その両方があって、三陸のカキ産地は復活へ向かっています。
唐桑のカキは早く出荷できそう、ということなので、送られてくるカキは唐桑のかも!?
送られてきたあかつきには、東北産の日本酒と一緒にいかがですか?


hoshizouさん

マサノリさんのところでも、わずかに残ったいかだのカキが、瓦礫とからまっていて、それをボランティアのダイバーが外してくれたそうです。
確かに、唐桑の海の底も、がれきだらけだと言っていました。
きれいな海を取り戻すための努力も、続いていきますね。


かみさまさん

もう~是非ぜひ!(笑)
三陸は、カキもホタテもワカメもおいしいんですよ。
「おいしいから応援する」というのが、生産者さんもうれしいと思います。
ついでに、気仙沼産の戻りカツオも、今が旬。めちゃうまですよ。
たくさん食べて応援しましょう(^^
by しろのぽ (2011-09-02 01:51) 

北海 熊五郎

NHKで広島の牡蠣養殖業者の応援の話題やってましたね。
復活が楽しみです
by 北海 熊五郎 (2011-09-02 06:42) 

luces

フランスからの支援のお話、とても心が温まります。
広島や全国からの大きな支援で復興が進められているんですね。

by luces (2011-09-02 12:35) 

肥前のFe

う~ん いいなぁ~
  人の温かみを感じます
  ホタテ 注文するか
by 肥前のFe (2011-09-03 08:03) 

しろのぽ

北海 熊五郎さん

広島からの支援は、あちこちでニュースになっていましたね。
ちなみに、RQのボランティアもちらほら写ってました。
カキ養殖の復活は何年後か・・・応援していきたいですね。


lucesさん

宮城産(松島近辺が多い)の種ガキは、日本中のカキ養殖を支えているといってもいいそうです。
ライバルだけどお互いに助け合う、共に歩む存在なんですね。


肥前のFeさん

三陸は、カキだけでなく、ホタテやワカメもおいしいですよ!
よかったらぜひ、注文してくださいね。

by しろのぽ (2011-09-04 15:57) 

pitts

熊五郎さんと同じ番組を見ました。以前広島のカキ養殖がなんかのせいで打撃を受けたときに、東北のカキ養殖業者たちが支援の手を差し伸べたそうです。「持ちつ持たれつ」ってのはよくない意味で使われる方が多い言葉だけど、本来こういう意味だよなー。
私も友達と、リュカさんと同じやつやってます。3年後か5年後か10年後か、いつの日かその牡蠣で一杯やるのです。楽しみなのです。
by pitts (2011-09-04 21:13) 

しろのぽ

pittsさん

自然と向き合っての生活は、いつ誰に何が起きるかわからない。
だから、何かあったときには、普段ライバルであっても助け合うのだろうな・・・と思いました。
「持ちつ持たれつ」ね。
ワタシは唐桑に愛着わいちゃってるので、唐桑応援の方やろうかなと思ってます。
そして、現地に食べに行かなきゃ!漁師さんと約束しちゃったしね(笑)
by しろのぽ (2011-09-04 21:27) 

HIRO

こんにちは。
互譲互助って、言葉もありますが、困った時には日本だけじゃなく世界的な支援の輪が嬉しいですね。
東南アジアの国で、日々の暮らしに汲々としている人達が、募金してくれた…とかの話を聞くと出来る事はやって行きたいです。
by HIRO (2011-09-05 07:52) 

e-g-g

毎年、岩手から生牡蠣が送られてきました。
仕事でお世話になったクライアントからですが、
いつも旨い旨いとはしゃいで食すばかり。
そのカキが街の人間の口へ入るまでに、
どれほどの手間がかけられていることか、、、

もう、岩手からの贈り物は届かないでしょうが、
こんどは自分の目と舌で、しっかりといただきたいものです。
by e-g-g (2011-09-05 20:09) 

T2

NHKでやっていた応援の話題
僕も見ました
支援が、日本だけではなく世界から
つながるのはいいことですね

by T2 (2011-09-06 12:40) 

しろのぽ

HIROさん

日本だけではなく、世界からの支援が次々届いたニュースは知っていました。
でも、こうして目の当たりにすると、とても感慨深いものがありました。
被災した土地や人々の生活を立て直すこと。
日本が、世界の中でどう振舞うか考え、行動すること。
そういったことが、世界からの支援に対するお礼になると思います。


e-g-gさん

岩手のカキは、これまた高級品なんだそうですね。
ワタシも、広島にある友人の実家から、毎年カキをいただいています。
こんなにどうしよう、というくらいあるのですが(笑)
これからは、カキを食べるにも、今までと違った気持ちになるだろうなと思います。

岩手のカキ養殖にも、支援を得て復活を目指している産地がいくつもあるそうです。
いつの日か出荷されるようになったら、大切に味わいたいですね。


T2さん

みんなその番組見てたんですね。ワタシも見たかったなあ~(^^;
日本で、日本人が消費する食品を作るにしても、海外との協力は欠かせないのだとあらためて思いました。
国を越えた助け合い、本当に心強いです。
by しろのぽ (2011-09-07 02:01) 

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