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とーはく@とーはく 〈没後400年・長谷川等伯展〉 [見たもの読んだもの日記]

週末は雨続きでしたねー。
だからってワケではないのですが、週末は展覧会ネタです。

図録のお値段は良識的でした(笑).jpg

上野にある東京国立博物館で行われている、長谷川等伯展
当然ですが、前売買って待機してましたよ。

会場に着いたのは夕方前。
休日に行く時は、だいたい閉館前を狙います。
特に東博の場合、土日は18:00まで開いていることは、意外に意識されていないのだ。ニヤリ。

会場の平成館は、展示室がふたつに分かれてます。
第一会場に入ると、ガラスケースの前に人だかり・・・やっぱりね。
展示されているのは、初期の仏画のようです。
そのあと、豪華な障壁画が並んでいてかなり惹かれますが、ちょこちょこっと見て先へ。

後半の第二会場に入ると・・・
どっかーんばかでっかい涅槃図に圧倒されます。
沙羅双樹は天へ付き抜け、人や動物たちが悲しみに沈む大地は、どこまでも広がる。
雄大なスケール感が、物理的に大きいことで、さらに演出されます。
なんたって高さが8m近くもあるのだ!

記事の中の作品は、リンク先の画像を見てくださいね~。

その後は、水墨画への取り組みが続いていきます。
等伯っていったらこれだよね、の松林図屏風

右と左で枚数が違う・・・!?.jpg

実は何度か見たことのある作品です。
当然すぐれた描写力を持っている等伯ですが、この絵の松は、細部を省略し、筆のタッチでざっくりと描かれています。
なぜなら、この絵で描かれようとしたのが、松林そのものではなく、この濃密な空気感のある、空間そのものだったからでしょう。

等伯が、松林図屏風のような表現に至るのに、大きな影響を受けたのが、中国の画家、牧谿(もっけい)。
この猿の絵(古木猿猴図)なんか、そっくりなんだよね(笑)

サルそっくりです.jpg

墨の色の美しさも、この頃から断然冴えはじめるようです。

円熟期の水墨を堪能した後、順路の最初に戻ります。
時間が遅くなってきたので、最初より人が減ってるのは計算どおり!(笑)

等伯のキャリアは、北陸で「信春」と名乗る仏画師であったところから始まっています。
謎の空白期間を経て上洛し、表舞台で活躍することになります。
この間、後にライバルとなる狩野派の門を叩いていたらしいのだとか。

チケットになっているのは、豪華絢爛な障壁画、楓図壁貼付、松に秋草図屏風。狩野派とは全く違う画面構成です。

実はペア券の片っぽです.jpg

金地に、紅葉や鶏頭の朱、青い葉の緑青、白菊の胡粉・・・
絵具の剥落が惜しいのだけど、描かれた当時は極彩色だったはずです。
作品によっては、後世の、例えば琳派などにもつながる、装飾的な表現もみられて面白い。

こういった、後期の充実した作品群を見てから、初期の作品に戻ってみます。
すると、後の表現につながる要素を発見できるのがわかります。

肖像画も多く描いているのだけど、顔の表現など、まるで近代の画家の作品のようです。

似てると見た(笑).jpg

これは、千利休だよー。


最後に、さらに人の減ってきた会場で、後半の障壁画や水墨画をあらためて堪能。
さすがに、「松林図屏風」なんかは、人の列が完全に切れるということはなかったんだけど、全貌が見られるくらいにはなりました。


等伯は、まとめて見る機会が、意外と少ないんですよね。
一代で頂点へ上り詰めた絵師の、全貌がわかる展示になっています。
もともと短い(んだよなぁ)会期もあとわずか、お見逃しなく~。


没後400年 特別展「長谷川等伯」

2010年2月23日(火)~3月22日(月・休)
東京国立博物館平成館(上野公園)




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コメント 18

リュカ

わ~い!等伯レポ待ってましたーーー!
松林図屏風の雰囲気、空気。良かったですね。
これって普段はやっぱり展示してないんですよね??
国立博物館所蔵だもんね~。

あぁ・・・しろのぽさんのレポ読んだら、また行きたくなっちゃった・・・(笑)
さすがにやめておきます^^;
山種美術館にも行きたいから(笑)
by リュカ (2010-03-11 08:19) 

luces

この方は存じ上げなかったので知見が広がりました。
猿の絵は見たことある。
と思ったけれど、ご本家とどちらだったかなという程度の記憶です。
松林図屏風が素晴らしいですね。しろのぽさんのおっしゃる通り
空気感が伝わってくるようです。
by luces (2010-03-11 09:08) 

miyomiyo

惰眠を貪っとったらアップしてるやんけ、前記事再訪しとらんのにぃ、、、、。
タイトルは「とーはく」をかぶらせてあるんですな、長考したな。ッテソコ?

休みの雨の日にわざわざ行ったのに案外空いてないもんですか。

「絵師の正体を見た」ってとーぜん◎◎は見れたんでしょーな。
◎◎の正体は偶像ですらうなされてしまうので自分は見たくないです。

絵の感想は再訪にて。(って来るんか(?_?))

by miyomiyo (2010-03-11 09:50) 

SAMEDI

おお!アップが早い!(笑)
つか芸術鑑賞しとらんなーワシ・・・。
あ、お昼休み終わっちゃうよってことで、コメ逃げです^^;ハミガキシナイトネ
ちなみに再訪もありませんm(_)mスマン
by SAMEDI (2010-03-11 12:57) 

響

久々の美術系カテゴリー?
絵をマウスで書いてしまうほど美術に疎い僕ですので
初耳の方です。
水墨ならではの濃淡の美が良いですね。

by (2010-03-11 19:10) 

tonoji

>美術ネタだからって帰らないように(笑)
この言葉にめちゃウケしてしまった私です
(^▽^ケケケ 
他のシリーズも見直すと面白いし巧い事言うな~(爆)

あっ トーハクのきじでしたね(*_*)
これまた見に行った事はないけれど、持ってる切手が
1枚目の写真と同じみたい(¢_・)
墨と水と紙だけで・・・
これだけの物を表現するのは凄いよね~
by tonoji (2010-03-11 19:42) 

北海 熊五郎

名前は聞いた事があります、。
昔の人だと思いますが、金色の豪華な絵ですね。
豪華だけど悪趣味ではないですね。

by 北海 熊五郎 (2010-03-11 20:15) 

oko

美術ネタにも弱い私ですが・・・・笑
(狭く深ーくの知識なのよね・・・)
名前の響き聞いたことがあります。
松の絵を見て、墨というものはこんなにも
濃淡が表現出来る物なんだ・・・って
思いました。
by oko (2010-03-11 21:14) 

maki

う~む、すごい迫力が、、
そういえば鶴岡八幡宮の大銀杏を思い出してしまった、、
白黒ワールドってなんともいえない深みを感じますね。
実は私一瞬水墨画を齧ったことがありますの^^;
でもああいう偶然の産物的なの(と先生が儲け主義だった)のが性に合わなくて辞めてしまいました。
極めれば偶然ではなく意図して描ける世界なのかな・・?

それにしても相変わらずしろのぽ先生の日本画教室はとても分かり易いです^^
例の出し方などがあまりにもピンポイント。
ぜひとも観賞の手引き本の出版をお願いしたいものです。
by maki (2010-03-11 22:34) 

桜♪

水墨画はシンプルの中に ちゃんと強弱があり 感情が表現されている不思議な画法だと 思っていました
知り合いに日本画の先生がいます よく個展やら教室展やらに出かけますが いつも繊細な筆使いにココロ揺るがされて帰宅します
きっと 長谷川等伯の作品も もっともっと感動するんだろうなぁ・・ホォ


by 桜♪ (2010-03-12 10:07) 

にこちゃん

長谷川等伯、知らなかったですー
日本画かなり疎いのを再認識。。。(-ω-;)
でも、幽玄だね!
西洋画にはナイ手法がオモシロイ~!
今週末は晴れそうなのでお出かけできそうかな?
by にこちゃん (2010-03-12 11:51) 

hoshizou

芸術にうといと思われてるけど、本当は、うといです。
でも、博物館大好き男なのです。
この博物館でいつも特別展やってるよね。
前行った時は、あしゅら象の展示やっていたような。。勘違いかな。
今度九州メンバーが電車で来た際は、寄生虫博物館いこうね。
by hoshizou (2010-03-12 23:22) 

しろのぽ

リュカさん

おまたせしてましたー?
会期の残ってるうちにレポ書けてよかったです。
松林図屏風って、意外に見る機会があって、今まで何度か見ています。
等伯に相当ハマったみたいですね。
ワタシも、こんなに面白い絵師だったのかという発見がありました。
山種美術館の展示も、充実してますね。
奥村土牛の大きい展覧会も、久しぶり!これ狙ってます♪


lucesさん

作品は有名ですが、名前は意外に知られてないかもしれません。
猿の絵は、ご本家だったかも(笑)
松林図屏風は、牧谿の影響から一歩進んだだけでなく、日本の水墨画のなかで、ひとつの到達点に立っている作品だと思います。


miyomiyoさん

まーーだダラダラ寝てるんかい(爆)
タイトルは、翌日ぽこっと浮かんできたのさ~。
レポの方が100倍長考したさ~。
東博の特別展でガラガラってのも、ここ数年見たことがありません。
晴れだったらもっと人出が多かったでしょう。

ワタシの正体ですか?
最近ジドリもないし、安眠しておられると思ってますが(笑)

で、結局また来るわけね~・・・


SAMEDIさん

これ、会期短いですからね。
旬なうちにがんばってアップしました(^^;
ってお昼休みに急いでご来訪?お忙しいところありがとうございまーす。
再訪は、得意としてるおぢさんがいるのでまかせておきましょう(笑)


響さん

展覧会ネタも久しぶりでしたっけ?
あの絵はマウスで描いたとは思えませんよー。
等伯って絵師としてかなり上り詰めてるんですが、息の長かった狩野派のほうが有名かも。
水墨は、現物を見るとその豊かさにさらに驚きますよ。


tonojiさん

よくぞ気付いてくださいました!
「続きを読む」の文は、結構考えているんですよ。

地方にいると、等伯どころか、日本の古典美術に触れる機会も少ないですよね・・・
松林図屏風って切手になってました?
昔は名画シリーズって多かったけど、最近は減っちゃってさびしいです。
水墨って本当に深い世界です。墨一色が、無限の色を秘めているんですよね。


北海 熊五郎さん

没後400年ですからねー。
当時の権力者のお抱え絵師だし、時代の要請もあってこの表現になったというのもあるでしょうね。
対して、今の偉い人。どれだけ、芸術に対して理解をもっているだろう・・・

okoさん

等伯は、何となく知ってたら偉い!、ってところでしょうか。
松の絵だけでも知ってればOKです。
水墨は本当に深い世界です。って最近思うようになってきたんですけどね(^^;


makiさん

大銀杏は、最近倒れちゃったあれですね。
墨一色といいますが、そこに無限の色をもっています。
水分の多い絵具を使う場合、その水の流れを利用して絵を描きます。
慣れてくるとある程度計算できるのですが、計算を超えたものが出てくるのが面白さだと思います。

うふふ、ありがとう~♪いやー、学芸員の資格取っとけばよかったかな(えっ!?)
日本人だけど日本の美術はよくわからない、という人に、少しでも魅力が伝わるといいな。
と思うので、これからもわかりやすいレポを目指しまーす。


桜♪さん

水墨は、テクニックだけでは計算できない要素が多いです。
そこに、描く人の隠れた思いも映し出されるのかも。
日本画の繊細な描写には、やっているワタシもあこがれます。
さらに等伯のようなスケールの大きい作品には、圧倒されちゃうこともあります。
何でもいいから、感動するココロは持っていたいですよねー。


にこちゃんさん

どうしても、同時代の狩野派のほうが有名なんですよね(^^;
好きでよく見てるけど、歴史的な要素にはとんと疎いワタシですorz
西洋画と東洋画は、技法もさることながら、空間の使い方も全く違うから、見るにもちょっと違った目が必要かも。
週末は天気よさそうですよ。お出かけドコに行くのかなー♪


hoshizouさん

はい、うといって知ってます(爆)
この博物館は、主に美術・工芸の展示が多いんですが、歴史遺物ももちろんあります。
東博は、阿修羅展もやってましたね。
あの素晴しさは、実際に見て驚きでした。
ま、寄生虫博物館はネタでしょ(笑)
by しろのぽ (2010-03-13 02:10) 

teru

あ、完全に出遅れた。
でもコメするぜーー!!
この手の絵や写真、以前は全部「上手いなぁ」って感想だったんだけど、最近は「凄いなぁ」に変わって来ました。
え?どこが凄いかって?
それは、しろのぽさんの解説を読んで納得してると言う(^^; (笑)

by teru (2010-03-13 08:08) 

miyomiyo

利休さん、「こりゃあかんわ」みたいな表情ですな。
◎◎さん「はよ起きや~。」

松はガンッッッッと沸き立つ瞬間みたいで素晴らしいです。
墨が生きてるみたいです。
金箔の絵もえーです。
錦秋の秋のさらにゴーヂャス版、って印象です。
出来たばっかの絵を肉眼で見たら絶対圧倒されること間違いなしです。
きっと走り去る風もリアルに感じられたでしょう。

でも当時、生きてても見られたのは極僅かなしとだったんだろーナ。

次のアートはルノワールかな~、それとも意表を衝いてポンペイか。
◎◎とは相容れない画風風(?)と思われるルノワール評、超楽しみです。

でも週末は怠惰にゴロゴロしててくらさい。

◎◎は美術展なら天気なんてどーでもいーけどやっぱ雨降ってる、みたいなお嫁さんになるでしょう。

by miyomiyo (2010-03-13 08:57) 

be-sun

行きそびれるところでした 来週行ってきます
by be-sun (2010-03-13 21:00) 

しろのぽ

teruさん

はい、出遅れはワタシも得意としておりますorz
気にせずおいでくださいませ!(笑)
「上手い」は技術だけど、「凄い」は感覚ですよね。
なので、絵を見て凄いと思って、どうしてなんだか説明するのって難しいです・・・


miyomiyoさん

あー起きてるさ。遅くまで(違う)

松林図なんか見ると、ホントに墨自体に生命があるかのような色ですね。
金箔の障壁画はたくさんあったんですが、できた当時は目もくらむような色合いだったかと。
こんなのに囲まれてたしとって、どんな精神状態だったのでしょう。

あールノワール、射程外でした。見てもええけど。
小野竹喬は何度か見てるので、現状は奥村土牛狙いです。

もう春なんで、週末は@ホームへお出ましです。
雨が降ったら美術館、という美術的晴耕雨読生活となるでしょう。
こんなんでいいよってしとがいないと、嫁にはなれないでしょうナ(自爆)。


be-sunさん

かなりよかったのでおすすめです!
さらに、できるなら金曜夕方の夜間開館の時間帯がいいですよ。
楽しめるといいですね。
by しろのぽ (2010-03-14 01:15) 

miyomiyo

んで今日は@ホーム行けたカナ~。
おぢさんは、明日病院行ってきますレベルの鼻水と目の痒みです。
昨日チョロチョロし過ぎたカモ。
明日から花粉のない国に行ける◎◎が羨ましいゾ。

ぢゃ28日の野鳥観察会にて。(謎)

by miyomiyo (2010-03-14 14:23) 

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