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北へ。その2―そこに、心がある [大地震、それからの日々]

真夏でもこの装備です。


いつぞやの人を笑えません.jpg


なんで絵にするとこんなあやしい雰囲気になるんだぁぁ(T▽T;)

それはさておき(笑)
今回は、ほぼフル装備で臨んだ現場の話です。


7月11日、12日に参加したのは、津波で被災した家屋からの家財出しでした。
甚大な被害を受けた港近くは、かなり取り壊しが進んでいましたが、このおうちの作業はやや後回しになっていました。


カイタイOKって書いてあります.jpg

(写真は、作業したおうちではありません)

港から少し高いところにあるのですが、2階の床上まで水に漬かってしまったそうです。
どの部屋にも家財が散乱し、家具が倒れています。
ある部屋ではその上に天井がまるごと落ち、2階の床板が見えています。
こんな状況を目の当たりにしたのは初めてで、しばらく言葉を失いました。

4ヶ月前、このおうちでは、時が止まっていました。

今どきあまりないタイプだよね.jpg

時計です。津波にあった時に止まったのでしょう。


この日、男性中心のチームの中、女性はワタシとユウコさんのふたり。
与えられた最初のミッションは、2階にある、4ヶ月間放置された冷蔵庫を開ける!!
なんでも、2階から女性の悲鳴を聞いた人がいたとかいなかったとか・・・

畳や家財、土砂などは、家から出して種類・素材別に分けた状態で集積所へ持って行きます。
ガラスや陶器類も他と区別して集めるのですが、これが結構大変。ケガを防ぐため、皮手袋は必須です。
ある部屋では、蓋の取れた床下収納の穴が見えず、足がはまっちゃうということもありました。
それくらい物が散乱していたのです。(はい、ワタシが落ちました・・・)

それでも、1日目が終了するころには、だいぶ床が見えるようになっていました。



2日目も、同じおうちでの作業。

この日、依頼者さんが現場にいらっしゃいました。

どこまで家の中を片付けたらいいのかは、依頼者さんにお聞きして決めています。
また、家財を出すときに、これは依頼者さんに確認してからどうするか決めよう、というものは別にしていました。
(あとから、神棚をお渡ししていました。)

「もう全部使えませんからね、処分してくださっていいですから」
そう言う依頼者さんの声が、少し震えているように聞こえました・・・


支援コーディネーターのほっしゃんは、落ちた天井の下敷きになって倒れたピアノにこだわっていました。
依頼者さんははっきり言わないけれど、きっと思い入れがあるはずだ。できるだけのことはしてあげたい、と。


他の拠点からの応援も来て、2日目は大所帯での作業でした。
あの天井が、男性10数人の手で持ち上げられた時には、思わず目を見張りました。
手付かずだったこの部屋も一気に片づけが進み、ピアノが姿を現しました。
大きなおうちだったので、作業にはあと数日を要しましたが、かなりきれいにして終了したそうです。
あのピアノは、可能な限り元の状態に戻して掃除し、熊のぬいぐるみを座らせておいたのだとか。


おそらくこの家は取り壊されるでしょうし、そのための片付けと割り切るなら、そこまでする必要はないのかもしれません。
だけど、大切なものを失うときに、ただいきなり奪い去られるのと、その過程を見送っていくのとでは、心の整理のつきかたが、大きく違うと思うのです。



このおうちで作業をしている間、お向かいのお宅が、休憩場所やトイレを提供してくださいました。
ここもまた、1階の床上まで浸水しましたが、片付けた後住み続けています。
食事場所にとお座敷を貸してくださったのですが、障子のさんが一部欠けていたり、ふすまや畳にゆがみがあったりと、被害の跡が残っていました。
そして、お仏壇には、おばあちゃんの遺影と、「平成二十三年三月十一日」と書かれた位牌・・・

大切な人や家やものを失い、困難な生活を送っていながら、他所から来たボランティアを受けいれてくださる。
そんな現地の方々のお気遣いに、何度も頭の下がる思いをしました。



「被災地」とひとことで言うけれど、そこには、たくさんの人たちの暮らしがあった、または今もあり続けています。
そして、人には、心がある。それを忘れて、本当の復興などありえない。
戻ってきた今、そう思います。



しんみりしちゃったので、ちょっとひと息(笑)

散歩大好き!.jpg 声にやられちゃいます.jpg

海岸亭で飼っている犬のさっちゃんと、いつもいる猫のクロ。
さっちゃんの散歩は、ボランティアが交代で連れて行っています。
毎日「さっちゃん当番」を決めるんですよ(笑)
クロは、炊事場の勝手口の近くにいつもいて、「にゃーん」と鳴きます。
甘え上手さんで、相手しているとちょっとなごめました。


長くてすみません・・・(^^;まだまだ続きます。
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コメント 20

Kappa

意気込んでボランティア行ったけど、実は大した事できなくて、でも何かは出来るんだ、って思いました。継続して関わって行きたいです。
by Kappa (2011-07-20 21:20) 

リュカ

実際に見てきたからこその記事。
うるうるしてしまいました。
本当に、私たちは「被災地」でひとくくりにしてるけど
其処にはたくさんの人のひとりひとりの生活があった場所なんですね。
依頼者さんの少し震えていた声。想像すると胸がしめつけられます。
by リュカ (2011-07-20 21:21) 

北海 熊五郎

結局冷蔵庫の中身は。。。。。
さぞや大変だったんでしょうね。。。。
ホントにお疲れ様でした。
by 北海 熊五郎 (2011-07-20 21:38) 

あにぃ

ワタクシの職場で、仕事として支援に向かった後輩がいましたが。
後輩が心残りにしてたコトを、ボランティアの方がしっかりカバーしていた事を読んで納得しました。
お互いの働きが上手く協調しあい復興が進むコトをこれからも願う思いです。

そそ、女性の肌に合うかビミョウですが?。
靴下は指割れ軍足が蒸れず、そして洗濯も楽ちんでいいですよ。
ウチの女性現場監督も愛用です。(笑)
by あにぃ (2011-07-20 22:03) 

key-k

地震で止まらないで津波で止まってしまった時計。。。
言葉になりません。
冷蔵庫の状況が気になりました^^;
by key-k (2011-07-20 22:08) 

わかけ

ご苦労様です。
私も生活に困らなければ行きたい気持ちはあります。
リサイクル屋で身に付けた技術も役に立ちそうだし。
でも生活しているだけでいっぱいいっぱい、、、

本当にご苦労様でしたm(_ _)m
by わかけ (2011-07-21 00:56) 

HIRO

こんにちは。
お疲れ様です。
報道では判らないけど、最後は心使いが大事になりますね。


TOP絵…何で絵にすると(核爆)
装備を黒くすると、押井守の「人狼」のケルベロス隊(爆)
by HIRO (2011-07-21 05:45) 

miyomiyo

蚤の心臓なんで、こっしょりnice!を押し逃げするです。
PS 何だかんだ言ってても、マスクしてるぢゃん。

by miyomiyo (2011-07-21 08:06) 

肥前のFe

以前の平安な生活が早く戻ってくること 祈ります。
 国会の先生方も ボランテァ作業やったら 質問も変わるだろうと思いました。
 女性ボランテァ 災害地に咲いた可憐な花 ですね。
by 肥前のFe (2011-07-21 08:51) 

ぽとす

音楽だの絵だの芝居だの、最低限生きていくのには全く必要の無いコト・モノと真っ先に切り捨てられるけど、生活と切り離せるからこそ何よりも思いや思い出や気持ちがぎっしり詰まっているんだよねぇ。陸自の人たちが福島の立ち入れない地区にある学校の体育館の津波被害ピアノをピカピカにして帰ったという写真を見ました。唐桑でも福島でもきっと心の傷が癒える支えのひとつになったと思うよぅぅぅ。
by ぽとす (2011-07-21 09:13) 

luces

みなさん被災された方の心を考えながら作業されているんですね。
時間はかかってしまうと思いますが、労をいとわず取組まれることに
頭が下がります。
4ヶ月放置された冷蔵庫は、ちょっと耐えられないと思います。
by luces (2011-07-21 11:30) 

ゆうゆう

ボランティアと被災者の方が協力し合って復興に尽力してるんですね。
国の政策はどうしようもないから、草の根で頑張って行くしかないですね。
本当に情けない話だと思います。
by ゆうゆう (2011-07-21 21:34) 

しろのぽ

kappaさん

あっカッパさんだぁ。唐桑では大変お世話になりました。
大きなことはできなくても、決してムダではないささやかなことの大切さを知ったように思います。
ワタシも、これからもできる限り関わっていきたいです。


リュカさん

実際に行かなければ、このようなエピソードに自分で立ち会うこともなかったでしょう。
現地の方々の、今を生きている姿にも・・・
依頼主さんは、終始冷静にふるまっていらっしゃいました。
震えていたのは、依頼主さんの声なのか、自分の気持ちなのか、実は定かではないです。


北海 熊五郎さん

あと、放置された開封済みの牛乳とか・・・(泣)
以前、古いもので5年くらいたった食品の入った冷蔵庫を、掃除したことがあります。
あれもひどかったけど、電源が入っていただけマシだったと思い知りました。


あにぃさん

建物の撤去とかなんでしょうか?この前聞いておけばよかったなー(^^;
それぞれ、できることと誰かにおまかせしないといけないことがありますよね。
現地のニーズをしっかり汲み取った上で、必要な作業や支援が行き渡ってほしいです。

はい、今回は指割れ軍足をゲットして行きましたよ!
綿よりも乾きのいい化繊がいいというアドバイスもあったので、安いけどドライ素材のもので。
もう靴下はこれでいいじゃん!っていうくらい快適です。
ライディングブーツを履く時はこれで決まりかも(笑)


key-kさん

あとで知ったのですが、このおうちには、地震の時に止まったと思われる時計もありました。
そして、お向かいの家の位牌・・・津波があっという間に、さまざまなものを奪ったことを思い知ります。
それにしても、冷蔵庫、結構食いつきいいですねぇ(^^;


わかけさん

ええまあ、生活には困ってますが、時間があったので行きました(笑)
現地に行くとなると、最短で2泊3日のうち作業1日、みたくなっちゃいますからね・・・
でも、首都圏にいて短時間でできることもあるので、気になったらRQのサイトものぞいてみてください。


HIROさん

ワタシはTVも新聞も見ていないので、どんな報道がされているかあまり知らないのですが(^^;
そこにたくさんの人々が暮らしていることを、忘れてはいけませんよね。
いや、どっちかっていうと、黒くしたら昔の過激派みたいな、っていうかルーツが近い気がしますけど(笑)


miyomiyoさん

堂々とコメント付きで押してってるやんけ~。
ツイッターでおぢさんとこ見ると、ましゃに場外乱闘会場になってますが??
いや、マスク嫌いですよ、常に。
でも、ないとホコリとニオイにやられる状況ぢゃ好き嫌いは言ってられんです。


肥前のFeさん

まだまだ、生活を取り戻す方向に動き出した人もいる、という状態でしょうか・・・
エライ人たちも、現地を視察するだけでなく、少しでも一緒に働いたら、また違うかもしれませんよね。
唐桑で見たボランティアは、男性がやや多いかな、という比率でした。
そこに混じる女性たちは、はつらつとして魅力的でしたよ。(あっもちろん男性陣も!)


ぽとすさん

そうですよね、本当に・・・
今は生きることで精一杯でも、生活そのものとは違う部分での心の支えが、いずれ必要になると思います。
経済優先でいろんなもの切り捨てて、ギスギスしちゃってますよね、この国。
陸自の人たちがピアノをきれいにしたお話、いいですね。
復興の兆しの見える岩手、宮城に対して、福島は全く違うという話も聞きました。
そのピアノに、子供たちや先生は再会できるんでしょうか。なんだか切なくもあります。


lucesさん

ワタシも、行ってみて初めて、ボランティアの方々が地元の方の気持ちを汲もうと、大変努力していることを知りました。
傍から見たら効率が悪く見えそうですが、ただ作業が早く進めばいいというものでもないんですね。
はい、冷蔵庫、実際に見るまでは、ちょっと想像もつかない状態でした・・・


ゆうゆうさん

官公庁、自衛隊や海上保安庁、企業、各種団体、それぞれの役割があって、協力し合って進めていくものだと思います。
国には国の役割があるのだから、そこはしっかりしてほしいです。
ただし、叩くだけ叩いておいて、結局は丸投げしたいだけの人たちには、正直腹が立ちます。

by しろのぽ (2011-07-22 00:57) 

oko

お疲れさまでした。
壊してしまうのは大きな機械があれば一瞬だけど、
そこには当たり前の生活が存在してた証があるんですよね。
そんな事実があるけどこれからを生きて行かなければ
いけない・・・辛いです。
長袖にビブス・・・この季節考えられないけど、
この格好でないと大変ですね。臭いと虫は凄いと聞きました。
長い夏・・・まだまだ大変です。
by oko (2011-07-22 05:46) 

HIDE

大変お疲れさまでした。
何かやらなければという意識の中で、このような実行力に敬服いたします。
私自身も今回の震災で色々と考えさせられました。
日常の平凡な幸せがどれだけ幸せなことなのか、などなど・・・
ともあれ、お体ご自愛くださいね。
by HIDE (2011-07-22 06:13) 

e-g-g

その1と併せて拝読しました。
これほどしっかりと読むブログ記事も久しぶりです。
あやしい雰囲気も、いや実に分かりやすい!
この先もどんどん続けてください、
長いなんて、とんでもない。
by e-g-g (2011-07-22 09:25) 

maki

赤軍みたいないでたちですね、、
これ、すべて自前で揃えて行ったんですか?
ヘルメットとか・・?
あ、ヘルメットは持ってるのか、、。

ほんと、真剣に読み込んじゃった。
そして真面目な文章に引き込まれていたのに
写真のキャプションが「今どきあまりないタイプだよね」には
泣き笑い(T▽T;)
こりゃ一本とられましたわ。
by maki (2011-07-23 16:16) 

しろのぽ

okoさん

もちろん、大きな機械で一瞬にして壊さなければいけなくなる瞬間はあります・・・
でも、本当にその通り、そこにはそれぞれの生活があったんですよね。
その点への配慮が必要なことが、ボランティアに行く人に対しても呼びかけられています。
長袖は暑いようですが、直接陽にさらされるよりも実は楽ですよ。
ビブスはメッシュ素材なので、それほど影響はありません。ちゃんと考えてるなー。
報道でもブログでも、どうしても伝わらないのが臭い。
あるかないかで実感がかなり違うと思います。
あと、ハエがとにかく多くて、虫嫌いの人はかなり辛い状況です。
涼しくなってほしいですが、東北にはあっという間に冬が来ちゃいますよね・・・


HIDEさん

ワタシもやはり、現地へ行きたくても仕事があるし、みたいな状況でうじうじ悩んでました。
無職になるので心置きなく(笑)行きましたが、仕事の合い間を縫って来ている人も多くて頭が下がりました。
日常の平凡な生活が、実は何を犠牲にして成り立っていたのか、震災が突きつけたものはあまりにも重いです。
幸い身体は丈夫なので、これからもちゃんと維持して使わなきゃって思ってます。


e-g-gさん

帰ってきてからがーっと入力して、ちょっと削って、でもやっぱりあれもこれも、で長くなっちゃいました(^^;
しっかり読んでいただけて、ありがとうございます。
いや、どうして絵だとあやしくなるのか、実際の写真なんか見ると謎で謎で仕方ないですが(笑)
e-g-gさんのコメントに勇気付けられ?その3は長文一気アップしてしまいました・・・
お忙しいところすみません。お時間あったらお付き合いくださいませ。


makiさん

あ、赤軍(笑)
いやー、実言うと世代じゃないので、何に似てるのかわかってなかったりして(爆)
この絵の装備は、ビブス以外自前ですよ。(革手は借りましたが)
どーせ着るときないし、と、夏物全く買わずに、今回の装備につぎ込みました。
ヘルメットも、作業用のをひとつ。2000円以内で買えちゃうようなものですよ。

こんな長いのに、真剣に読んでいただいてありがとうございます。
写真のキャプション?なんだっけ?とすっかり忘れておりましたが(笑)
実は結構考えて付けています。でもこれがウケるとは思ってなかったです・・・(^^;;

by しろのぽ (2011-07-24 01:07) 

maki

一応言っとくけど、私だって赤軍世代ぢゃないわよーーーーー
イメージよ、イメージ(°Д°;;アタフタアタフタ
by maki (2011-07-24 15:14) 

しろのぽ

makiさん

あ、お、お姉さま・・・( ̄▽ ̄;;)スミマセン
赤軍も過激派もよくわかってないんですけど、ここで誰か知ってる人いるのかしら(笑)!?

by しろのぽ (2011-07-24 21:23) 

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